虫籠


最初に三田恵佑を見た時、櫛川は妙に小綺麗な顔をしていると思った。
いや、特別な美形という訳ではない。
“穢れていない”と言えばいいのだろうか。
そう若いと言う訳でもなく、世間ずれしていていい年だろうに、三田は世の中の穢れを全て素通りして来たような、そんな顔をしていた。
(ふぅん…)
多分、親友と信じて安易に保証人の欄に判を押したのだろう。借財人の寒川に騙されたことさえ、三田はまだ気付いていないようだった。
だが、その癖、妙に潔い。
幾らまだ親友だと信じている男の為とは言え、他人の借金の犠牲になるかも知れないのだ。 何故、今まで見てきた人間がそうしたように、この男はもっと足掻こうとはしないのだろうか。
醜く這いつくばって、自分に情けを求めようとしないのだろう。
「分かりました。腎臓でも肝臓でも、何でも提供します」
普通の人間なら蒼ざめて震え出す此方の要求にも、ただ諦めたように溜息をついてそう言った。
(何故、そんなに綺麗な顔をしていられる?)
櫛川はそんな三田に興味を覚えた。

この男を汚したい

そんな欲求で、腹の中がどす黒く燃える。それは、エクスタシーとも言える感覚だった。
(久々に、面白いもんが転がり込んできたな…)
この処、退屈を持て余していて、女を抱くのにも飽き飽きしていた。そんな櫛川にとって、三田は都合のいい玩具でしかなかったのだ。
存分に汚して、そして痛めつけてやりたいと思った。屈辱に歪むこの男の顔を見てやりたい。
「では、三田さん、身体を売ってもらいましょうか」
櫛川はそう言いながら、久々の高揚感を味わっていた。
三田はまた、大きく溜息をついて、
「ええ…」
と答えた。


三田を所有のマンションへ軟禁し、櫛川は好きな時に呼び出しては辱めた。
最初、三田は有らん限りの抵抗を示して、強情に身体を開こうとしなかった。
だがそれも、悪戯に櫛川の狩猟本能と残忍性に火をつけただけだった。
舌を噛まないように口枷を嵌めさせ、櫛川は部下に命じて三田の下半身を丸裸に剥いだ。 そして、右と左の手と足を其々に縛り付けさせると、床の上に転がした。
頬を絨毯に擦りつけたまま、自由の利かない三田は無様にも櫛川の前に高く掲げた尻を晒すことになった。
「ふぅん、真っ白だな。綺麗なもんだ」
馬鹿にしたようにそう言って、櫛川は爪先で三田の尻の膨らみを突付いた。
そして、横に回り顔の傍にしゃがむと、手に持っていた器具を三田に見せた。
「分かるか?この中にローションてヤツが入ってる」
憎々しげに自分を見上げる三田にニヤニヤと笑って見せ、櫛川はそれを持った手を彼の臀部へ運んだ。
注射器型の器具の中にローションが仕込んである。その先端を、櫛川は三田のアナルへ突き入れた。
「ふぅッ…」
ビクッと三田の身体が揺れた。
その表情を、唇を舐めながら櫛川は面白そうに観察した。
チューッと、注射器の尻を押し、ジェルを中へ注入する。その冷たさに、ぶるぶるっと三田が身震いするのが分かった。
「こうやって中に仕込んでおくとな、ジェルが奥から湧き出したみてえに感じるんだ。まるで、女のアソコみてえにな」
そう言って、馬鹿にしたように笑ってやると、三田は口惜しげに目を瞑った。
ずっと顔を下にして尻を上げた形になっているので、三田の顔は些か鬱血気味で赤くなっていた。
その目の前で、櫛川はポケットに手を入れると、アナル用の指サックを取り出して2本の指に嵌めた。
「喜びな。道具じゃなくて指で解してやるよ。優しくな?」
ニヤニヤと笑いながらそう言うと、櫛川は形のいい唇をゆっくりと舐めながら屈辱に震える三田の顔を眺めた。そして、アナルに当てた指を遠慮なくずぶずぶと差し込んでいった。
「うぐぅぅぅッ…」
初めての異物感と痛みに堪えきれずに三田が呻く。
その声を聞きながら、櫛川はゾクゾクと背筋を震わせていた。
痛みを与える為に、もっと顔を歪ませる為に、櫛川は乱暴に指を動かした。そして、期待通りに三田が苦痛を表すと、楽しげに笑みを浮かべた。
苦痛よりも屈辱で三田の顔がより歪む。それを見て、退屈の虫が見る見る癒えていく。
櫛川はこの新しい玩具が酷く気に入った。
勿論、こんな格好をさせられたことも、他人の指に犯されたことも無いだろう。こんな辱めを受けるなんて、連れて来られた時には想像もしなかっただろう。
事も無げに友人の借金の犠牲になることを承知した三田に、櫛川は自分も、そして、借金を押し付けて逃げた寒川をもとことん憎ませたかった。

汚れればいい
汚れて、堕ちればいい。

芯からそう思って、櫛川は三田を甚振った。
「ぅううっ……、ん…ぐぅぅぅ…」
無理やり広げられ、指を3本も咥えさせられると、呻き声を上げながらも三田のアナルはさすがに緩んできた。
だが櫛川は、まだ自分のペニスを挿入するつもりはなかった。
拡張前の男のバージンに挿入しても、碌に快感は得られない。痛みばかりのセックスなどするつもりはなかった。
「ようし。そろそろ入るだろ」
そう言うと、櫛川はアナル用のバイブレーターを三田に挿し入れた。
「ううううッ…」
指よりも更に奥を犯され、また三田が呻く。それをまた、にやにや笑いながら眺めると、櫛川は彼を床に転がしたままで立ち上がった。
「暫くそうしてろ。丁度良く緩んできたら挿れてやるからよ」
嘲笑しながらそう言い、櫛川は構わずに部屋を出た。
若い者に運転させ、気に入りの店まで昼食を取りに行くつもりだった。
帰って来る頃には、きっと三田も自分に服従するようになっているだろう。そう思って、櫛川は声を出さずに笑った。


急ぐ必要も無いのでゆっくりと食事し、また若い者の運転で櫛川が帰って来たのは、凡そ2時間も経った頃だった。
部屋に戻ると、勿論三田はさっきのままの姿で床の上に居た。
「帰ったぜ。どうら、具合は良くなったかな?」
言いながら覗き込む。
そこには、もう放心したままの濁った目がある筈だった。
(……なに?)
だが、驚いたことに、覗き込んだ自分を三田は睨み返した。
驚きの余り、櫛川の唇から薄笑いが消えた。
じっと見ると、三田も目を逸らさない。脂汗の浮いた額の下で、その目は光を失っていなかった。
(まだ、死んでねえってか?)
ゾクゾクすると思った。
櫛川は益々この玩具が気に入った。
唸り続けるバイブレーターに2時間も甚振られ、すっかりアナルは緩み、ペニスから滴った汁で見っとも無く床を汚していながら、それでもこの男は屈していなかった。
「へえ?」
また薄笑いを浮かべてそう言うと、櫛川は三田のアナルからバイブレーターを抜いた。
もう、感覚も無いのだろう。三田はほんの少し身動きしただけで声を上げることも無かった。
見ると、抜かれた形のままでアナルは口を開いている。
また、ニヤリと笑うと、櫛川はズボンのベルトに手を掛けた。
「仕方ねえ。ご褒美に挿れてやるよ」
からかうようにそう言い、櫛川はペニスを取り出して何度か扱くと、開いた三田のアナルに宛がった。
「んくぅぅぅぅ……」
バイブよりは大分太い櫛川のペニスの浸入に、さすがに三田は大きく呻いた。だが、痛がっている訳ではないらしい。
「おう、いいぜ。良く解れてる」
嬉しそうにそう言い、櫛川は遠慮なく抜き差しを始めた。
「毎日、毎日よ、こうやってケツを可愛がってやる。その内に、自分から欲しがって泣くくらい仕込んでやるから、楽しみにしてろよ」
背中に向かって櫛川が言うと、僅かに三田の身体が震えたように見えた。
唇を舐め、楽しげに笑うと櫛川はその背を見つめた。



半月も昼夜を問わず毎日甚振られ、三田の身体は最初とは違ってきた。
挿入に痛がることは無くなり、弄られればすぐにアナルが緩むようになった。そして、櫛川のペニスを受け入れて快感を得るようにもなっていた。
それが、屈辱なのだろう。感じながらも悔しげな顔をする。
それがまた、櫛川には堪らなかった。
何時に呼びつけても、三田はきちんとスーツにネクタイで現れた。櫛川のオフィスに入ればすぐに脱がされ、床の上で甚振られ、折角のスーツもすぐに汚れてしまう。だが、三田は頑なにビシッとクリーニングされたスーツと真っ白なワイシャツを着て現れた。
マンションに軟禁しているのだから、三田のクリーニング代も食費も勿論櫛川の懐から出ている。だが、三田が服装を改めない限り櫛川は彼のクリーニング代を払い続けるつもりだった。
ケチケチするのが嫌だったということもあるが、三田が見た目に拘るのが面白くもあったのだ。
それは、“幾ら汚されても落ちるつもりは無い”と、三田が言っているように思えたからだった。



ちら、と見ていたパソコンのディスプレイから目を上げ、櫛川は目の前に座らせている三田の痴態を眺めた。
そのまま視点を固定し、顎を撫でながら、櫛川はニヤニヤ笑って三田を見つめた。
「ん…、んっ…」
ピクッと体が震え、着けさせたコンドームの中に三田が何度目かの吐精をした。
右と右、左と左の手足を拘束具で固定され身体を開かされて椅子に座らされていた。胸には乳首を刺激する振動板が貼られ、コンドームの中にもひとつ、そしてアナルにはローターが二つ入っていた。
そうして、朝からもう3時間、三田は櫛川の目の前に放って置かれていた。
最初は恨めしげに櫛川を睨んでいた目も、さすがに今は殆ど伏せられていた。
棒口枷で喋れないようにされていたが、時々、櫛川が器具の刺激を強くすると、鼻から甘ったるい声を漏らした。
ただ犯すだけでは飽き足らず、櫛川は度々こうやって三田を辱めた。
その度に、何度も三田の目を確かめたが、その目から光が消えることは無かったのだ。