虫籠
-2-
「もう、何処もかしこも痺れちまってんだろ?」
声を掛けると、僅かに三田の首が持ち上がった。だが、目を上げることは無かった。
手を伸ばして煙草を取り火をつけると、櫛川はインターフォンのボタンを押した。
「飯村をこっちに来させろ」
「はい」
櫛川の言葉にすぐに返事があり、呼ばれた飯村という部下が間も無く姿を現した。
窮屈そうに身を屈めて、部屋に入って来た飯村は大男だった。
歳は28、9だろうか。事務所の中では中堅クラスで、若い者を使って主に取り立てに回っている。
「お呼びですか?」
訊きながら、飯村は三田の乱れた姿態を好色そうな目つきでチラチラと見ていた。
櫛川は煙草を吸い込みながら頷いた。
「おまえ、こいつを犯りてぇんだろ?」
唇から離した煙草で三田を指しながら櫛川は言った。
その言葉に、項垂れたままだった三田がフッと顔を上げた。
その目を見つめながら、櫛川はニヤリと笑った。
「犯っていいんすか?」
嬉しそうに答えた飯村に櫛川は頷いた。
「いいぜ。おまえの真珠で可愛がってやんな」
女も抱くが、飯村の男好きは事務所でも有名だった。櫛川も、散々甚振って、飽きた男を飯村に宛がってやったことが何度もあった。
三田が事務所へ来ると、飯村が嘗め回すように見ていたのを櫛川は気付いていた。まだ自分以外の男に抱かせたことは無かったが、櫛川は三田を更に辱める為に飯村に抱かせることにしたのだ。
ぐったりとしていた三田が、急に目をギラギラさせて櫛川を睨んだ。
その視線に、櫛川は背筋をゾクゾクさせながら笑みを浮かべて三田をじっと見つめた。
自分を怨むその目が櫛川を興奮させる。
まだまだ甚振り、苛め抜いてやりたいと思わせる。
美形と言う訳でも無く、若くも無く、華奢でも女っぽくも無い。そんな三田に櫛川が執着するのは、彼のその目の所為だったのだ。
「じゃ、遠慮なく」
嬉しそうにそう言うと、飯村は三田の前に立った。
そして、三田のアナルからローターを引き抜くと、痺れたような顔でぐったりとした三田の前でファスナーを開けた。
「んぐぅぅぅッ…」
飯村の巨大な一物を突っ込まれ、三田の苦しげな呻き声が上がった。
幾ら、長い間玩具で解されていたとは言っても、飯村のそれは大き過ぎたのだろう。それに、飯村のペニスは大きいだけではない。その中には真珠がふたつ埋め込まれていた。
「ぅおお、いいぜぇ。思った通り締まりやがるっ」
飯村が下卑た声で嬉しそうにそう言い、激しく腰を使い始めた。
最初は痛がっていた三田も、やがてその大きさに慣れると、すっかり開発された身体が容易く彼に快感を齎し、恍惚とした表情を浮かべて喘ぎ始めた。
「ぅふぅ…っ……ふぅぅッ…」
甘ったるい声が鼻から抜ける。
飯村のペニスに埋め込まれた真珠が、前立腺を擦り上げるのが堪らないのだろう。幾ら意地を張っても、我慢が出来なくなってしまったのだ。
櫛川はニヤニヤしながら席を立つと、2人の傍に立ち、快感に溺れる三田を面白そうに眺めた。
自分に抱かれることは仕事と割り切ってそのプライドを保ってきたらしいが、他の男に嬲られて乱れてしまった後でも、三田はまだ、その目から光を失わないのだろうか。
それが早く知りたくて、櫛川はウズウズしていた。
「んくぅッ…、んぅっ……、んぅぅッ…」
痙攣しながら、三田がまたゴムの中にザーメンを吐き出した。
その頬を撫で、意識の飛びそうな彼の顔をもう1度見ると、櫛川は言った。
「俺はちょっと出てくる。ケツだけでイケるようになるまで可愛がってやんな」
笑いながらそう言うと、飯村の嬉しそうな返事を背中に聞きながら櫛川は部屋を出た。
戻った時、飯村に陵辱され尽くしたことに絶望した三田の目が、もし死んでいたら、その時は彼を棄てるつもりだった。
今まで甚振ってきた他の男や女のように、ただ自分に服従する玩具など櫛川は要らなかったのだ。
だが、期待はしていなかった。
ここまでされて、それでも尚、三田の心が折れずにいる筈も無いと思っていたのだ。
所用を済ませて櫛川が戻った時、飯村はまだ飽きもせずに三田を嬲っていた。
部屋に入ると、もう喘ぐ気力さえなくなった抜け殻のような三田が、飯村に揺すられて人形のように揺れていた。
「まだ、やってんのか」
呆れたようにそう言うと、櫛川は三田の方には目もくれず、自分のデスクの向こうに回ると椅子に腰を下ろした。
そして、デスクの上にあった新聞を手に取り、それを広げると、つまらなそうな声で言った。
「そろそろ終わりにしろよ、飯村」
「へい」
掠れた声でそう返事をすると、飯村は獣じみた声を上げながら、激しく何度も腰を突き、三田の中に吐精した。
さすがにもう、三田は諦めただろうと思った。
飯村が乱暴に突いても、声も漏らさない。
多分もう、心が死んでいるに違いない。
満足した飯村が、自分の濡れたペニスをティッシュで拭き、身支度を終えるのを気配で感じたが、櫛川は新聞から目を上げようともしなかった。
「社長、また犯らしてもらってもいいっすか?」
ズボンのベルトを締めながら飯村が言った。
「さあな。いつも通り、俺が飽きたら回してやるよ」
「頼んます。こいつ、すげぇいい孔してやがる」
「ふん?」
興味も無さそうに櫛川が答えると、飯村は名残惜しそうに三田を眺めた後で、櫛川に挨拶をして出て行った。
読み掛けの記事を最後まで読み終えると、櫛川はやっと新聞から目を上げた。
見ると、ぐったりとしたままで三田は身動きもしなかった。
新聞を適当に畳んでデスクの上に置き、櫛川は椅子から立ち上がった。
デスクを回り、三田に近付く。
見下ろすと、嵌められたコンドームの中で、まだローターが動いていた。
ゴムの上から三田の精液に塗れたそれを掴み、グッと引いてゴムごと外してやる。すると、ビクッと震えて、三田が目を開けた。
その目を見て、櫛川は目を見開いた。
三田の目からは光が消えていなかった。
それどころか、憎々しげなあの眼差しで、彼はまた櫛川を見上げていた。
(へえ…?)
ゾクゾクと、また櫛川の背筋が震えた。
勿論それは、恐怖ではない。
これほど辱めても、三田の心は折れていなかった。それを知って、心が騒いで仕方なかったのだ。
コンドームから毀れた精液が飛び、三田の身体や顔は汚れていた。
そして、アナルからも、注ぎ込まれた大量の精液が溢れ出していた。
「ケツでイけるようになったらしいな?」
わざと馬鹿にするようにそう言い、櫛川は三田の口に嵌った枷を外してやった。
ゴホゴホと幾らか咳き込んだ後で、三田は鋭い目を上げて櫛川を見た。
「この分は、別に借金から引いてくれるんだろうな?」
酷く掠れた声だったが、三田ははっきりとそう言った。
「くっ…くくく…」
櫛川は楽しくて堪らなかった。
こんな男を、見たことが無かった。
体中を自分と飯村の精液に塗れさせ、両脚を開かされたままの無様な格好でも、三田はこの辱めに屈してはいないのだ。
櫛川はそんな三田にゾクゾクしていた。
「いいぜ。飯村に犯らせた分は別に引いてやるよ」
言いながら、櫛川は三田の顔に飛んだ精液を指で擦り、彼の唇の中に突っ込んだ。
「今日は綺麗にして、部屋で待ってろよ?特別に、今夜はベッドの上で抱いてやるからよ」
櫛川がそう言うと、三田の目が驚愕に見開かれた。
「なっ?き…、今日はもう…」
抗議しようとした三田に、櫛川は眉を上げて言った。
「もう?まだ俺のは1度も突っ込んでねえぜ?部屋でたっぷり抱いてやるから、楽しみに待ってな」
ニヤニヤと笑う櫛川をもう1度睨みつけ、三田は諦めたように溜め息をつくと肩を落とした。