手紙
-31-
横たわった歩の手首を、壮士は言われた通りに包帯で括るとベッドの支柱に縛りつけた。
「痛くないか?」
「うん、平気…。壮士?」
「うん?」
「どんなに俺が嫌がっても止めないで?ちゃんと最後までして?」
「分かった……」
頷くと、壮士は立ち上がって服を脱いだ。
下着だけは付けたままだったが、歩は壮士の身体を久し振りにちゃんと見たと思った。
「なんだ?」
笑みを浮かべた歩を見て壮士は怪訝そうに訊いた。
「壮士の身体、カッコいい…」
「馬鹿…」
照れくさそうに笑い、壮士は再びベッドへ上がって来た。
忽ち、キュッと身体を硬くして歩が身構えた。
逃げまいとして必要以上に身体を硬くすると歩はギュッと目を瞑った。
(大丈夫…。壮士だもん、大丈夫だよ…)
そう思ったが、壮士の手が頬を包むようにすると、それだけで歩の身体は逃げ出そうとして動いた。
「アユ…」
壮士の手に力が入る。歩の顔が動かないように押さえつけて、そのまま唇を落とした。
「むんっ」
引き結ぼうとする歩の唇を壮士は覆うようにして挟み、何度も何度も吸った。
そして、多分噛まれる覚悟で無理やり歯列を割ると舌を差し込んだ。
グンッ、グンと、歩が押し退けようとして縛られた腕を動かした。だが、勿論それが届く訳は無かった。
「うぐッ」
やはり差し込んだ舌を、閉じようとした歩の歯に噛まれ、壮士は呻いて唇を離した。
「ごめっ…」
泣きそうになって歩が首を振る。だが、壮士は笑って見せた。
「平気だよ」
壮士は再び歩の顔に唇を落とすと何度も軽くキスを繰り返し、そのまま顎を伝って喉へと降りて行った。
歩の身体はますます強張り、動かない両腕を必死で引いた。
もう、縛られた手首は擦れて赤くなっている。だが、その痛みを感じている様子は無かった。
時々、軽く肌を吸い、壮士は赤い痕を残しながら乳首まで辿り着いた。
緊張と恐怖で、そこは硬く尖っていた。
それを愛しげに口に含むと、壮士はゆっくりと何度も吸った。
「いやっ……いやっ…」
小さく呟き歩は首を振った。
敏感になった部分への愛撫で強張った身体にも快感が走る。だが、そのこと自体、今の歩にとっては罪悪感でしかなかった。
イケナイ。イケナイ。イケナイ…。
頭の中で、警鐘のように、また言葉が鳴り響いた。
(違うッ…。いいんだ、壮士はいいんだよッ。してもいいんだッ)
首を振り、迸りそうになる拒絶の言葉を歩は飲み込んだ。
心配そうに自分を見上げる壮士に、必死で頷いて見せる。
すると、壮士も頷き、また歩の身体に愛撫を与え始めた。
「ああっ、いやぁっ…」
だが、キスがそこに達すると、歩は激しく身を捩って抵抗しようとした。
しかし、両脚の上に壮士の重い身体がしっかりと乗っていて殆ど動けなかった。
不安げに一瞬歩を見たが、壮士は意を決したように目を逸らし、それを口に含んだ。
「だめ…、だめぇ……そんなの駄目…」
放心したようになりながら、歩はうわ言のように言葉を発し続けた。
逃げようとする身体とは裏腹に、快感だけは伝わってくる
クンッ、クンッ、と腰が動き、まるで痙攣しているかのように歩は身体を震わせた。
イケナイコトダ。シテハイケナイコト……
湧き上がってくるその思いと、それを否定しようとする思いが激しく歩の中でぶつかる。そんな中で、身体は正直に壮士の与える快感に反応しようとする。
混沌の中で、歩は只管にもがき続けた。
「ひぃ…ぁッ」
とうとう、悲鳴のような声を上げ、歩は精を吐き出した。
「歩…?大丈夫か?」
目を見開いたまま、溢れ出る涙を目尻から伝わせている歩を、壮士が心配そうに覗き込んだ。
「もう、よそう?な…?やめよう、アユ…」
だが、包帯を解こうとして手を掛けた壮士に歩は首を振った。
「いや…。続けてよ、壮士…。俺の中に来て?入って来て……」
「アユ…」
「平気だから…。大丈夫だから、壮士……」
どう見ても大丈夫ではなかった。
身体を震わせ、恐怖に目を見開き、それでも歩は壮士から目を離さなかった。
ゴクッと唾を飲み込むと、壮士は歩の手を離した。
辛そうに、何度も何度も歩の額や頬に口付ける。
だが、歩の身体はそれさえも嫌がって、逃げようともがいた。
「こんなんじゃない……。何度も夢に見たけど、でもそれは、こんなんじゃなかった……」
絞り出すように、壮士は言った。
「あの時の俺は、ただ…、歩の身体が欲しくて…。だから…、アユの抵抗は俺を興奮させるだけだった。こんなに…、こんなに、辛くなんか無かった……」
「壮士…」
壮士は、歩の呼び掛けに首を振った。
「無理だよ。出来ない、勃たないよ……」
そう言うと、壮士は再び歩の手首に手をやり、縛り付けてあった包帯を解いた。
そして、真っ赤に擦れたその痕を癒すようにして唇を押し付けた。
「壮士……」
起き上がると、歩は壮士の首に腕を回した。
その身体を抱きしめ、壮士は言った。
「アユが触ってくれ…」
「え…?」
戸惑う歩の身体を離すと、壮士は下着を脱いで全裸になった。