ワルイアソビ


-7-

だが、武我の方は人の気配なんかにお構いなく、俺のチンコを扱き続けている。止めてくれと言う意味で腰を揺すると、武我の手は更に動きを早めた。
(やべえよッ。声、出るッ…)
ギッとマフラーを噛み、俺は必死で声を押さえた。
やがて、用を足した人が出て行くと、武我は俺のチンコから手を離した。
「もういいだろ?動くぜ」
耳元でそう囁くと、武我は俺の腰を掴んだ。
「んくッ…」
ズルッと俺の中で武我が動いた。
そうされると、慣れた筈の身体がまた痛みに悲鳴を上げる。けど、それと同時に、俺たちの結合部分が立てる淫靡な音に耳を刺激された。
(すげ、やらし……)
その厭らしさが酷く現実で、俺はまた身体が熱くなるのを感じた。
「いいぜ、晶…。すげえ、いいッ…」
掠れた、武我の声が俺の気持ちを更に昂ぶらせた。
「んっ…んっ…」
まだ痛みが勝っていたが、それでも俺は甘ったるく鼻を鳴らしてしまった。
武我に抱かれてるんだと思うだけで身体が痺れる。フェラしてる時に味わっている武我の形や色をまざまざと頭の中に蘇らせて興奮を高めた。
あれが俺ん中で動いてるんだ。
濡れた音が実際よりも大きく、俺の耳に届いた。
そして、痛みが徐々に薄れていくに従い、俺の身体ははっきりと擦られる事に快感を覚え始めた。
「すげッ…、吸い付くッ。いいか…?晶…」
耳元で武我が囁き、俺はブルッと震えた。
「んんっ……んっ…いい……いいよぉッ」
武我のチンコが俺のいい所をグイグイと擦った。
俺はまたマフラーを口に咥えて声が出ないように噛みしめた。
気持ち良くて我慢が出来ない。
擦られもしないのに、チンコももうパンパンに膨れ上がっていた。
「んふっ……出るっ…出る、出るっ……、もうっ…」
マフラーを噛んだまま、俺は激しく腰を振って言った。
武我の指でイッた時よりも、それは急激に訪れた。
「ふぁっ…」
ブルブルッと身体が震え、めくるめくような快感が突き抜けていった。
そして、俺はまたチンコの先からザーメンを吐き出した。
だが、武我の動きはまだ止まらない。
「んあッ…んくっ…、んくぅぅぅ…」
俺は泣き声混じりに呻きながら、握った拳を口に入れた。
「晶……」
感じている艶っぽい声で、武我が耳の後ろで俺を呼んだ。同時に、片手を前に回し、まだトロトロとイキ続けている俺のチンコを掴んだ。
「もう…ちょっとッ…」
言われて俺が頷くと、武我が手を動かしながら突き上げを早めた。
じくじくと疼いて切ないのと、気持ちいいのとが混ざり合い、俺は身悶えしそうなほどの状態だった。
武我が奥を突く度、チンコからザーメンが飛び出す。
“ヒーヒー言う”って良く言うけど、多分この時の俺がそうだったんだろう。
みっともねえけど、俺の口から出てくるのは殆ど泣き声だった。
「くっ……、あっ…」
やがて、俺の奥で動きを止め、武我がブルッと震えて射精した。
足が萎えたようになって、動けなかった。
そんな俺の中から出て行くと、武我は使用済みのコンドームを無造作に床に投げ捨て、ズボンを穿き直した。
「立てっか?晶…」
俺が力無く首を振ると、武我の手が俺の両脇に入ってきた。
「ほら…」
俺は武我に捕まって何とか立ち上がると、便座の上に座らせてもらった。
「脚、広げろよ」
グッと太腿を持ち上げられ、素直に従う。
すると、ゴムのジェルや体液で汚れた俺の尻の割れ目をトイレットペーパーで拭ってくれた。
(武我……)
久々に優しくされた気がして、俺は少しキュンとなって武我を見上げた。
俺の身体、良かったんかな?
それなら、琴音と別れてくれたらいい。
そして、俺だけ抱いてくれたらいい。
そんな事を思っていると、武我はすっかり身支度を整えて鞄を持った。
「少し休んでから帰りな。じゃな?」
「え…?」
まさか、行っちまうつもり?
俺が呆然として見上げていると、武我はサッと目を逸らした。
「アナルセックスって、どうかと思ったけどよ、良かったわ。晶も、ケツもいけるみてえだし、遠慮しねえから。……また、使わして?」
そう言って出て行こうとした武我の手を俺は慌てて掴んだ。
「ま…、待てよッ」
このまま、こんなトコに置いてけ堀だなんて酷過ぎる。行かれちまったら、きっと俺、泣いちまうに違いない。
武我は溜息をつきながら振り返った。
それだけでも俺は胸を抉られるように感じたのに、次に出て来た武我の言葉は俺をどん底へ突き落とすには十分だった。
「なに?足りねえ?」
呆れてるような口調だった。
忽ち、鼻の奥がツンとする。
けど、さすがに俺にも意地がある。グッと堪えて、武我の手を更に強く握った。
「さ、先に帰る気かよ?酷くね…?」
ヤバいと思ったけど、ちょっと声が震えた。
すると、武我の手がキュッと俺の手を握り返した。
「なに、気弱になってんの?なら、やっぱ、おまえんち行く?」
俺って自分でも信じられないほど単純だと思うよ。けど、これも恋してるからなんかな。
武我がちょっと優しくしてくれただけで、すぐにどん底から浮かび上がってくるんだから。
「う、うん。来いよ…」
「分かった。なら、向こうのベンチで待ってるし…」
「うん…」
俺が頷いて手を離すと、武我は個室から出て行った。
俺は汚れた身体をもう一度拭いて、パンツとズボンを穿いた。
ホームに出ると、武我はベンチに座って缶コーヒーを飲みながら待っていた。
近付くと、俺にも1本差し出してきた。
「あ、サンキュ…」
俺は温かいコーヒーを受け取ると、武我の隣に腰を下ろした。
もう、さっきの人は引けたらしく、ホームは何時もの状態に戻っていた。
「武我、さっき、ありがとな」
俺が言うと、武我は眉を上げた。
「あん?痴漢のことか?…って、余計なことしたんじゃね?俺…」
「な、なんで?」
「だって、晶、黙ってやらせてたしよ。あれもプレイだったんかなって…」
「え…?」
クッとコーヒーを煽り、武我は続けた。
「途中で思ったけど、じゃなかったら俺を煽ったのかってさ」
「んなっ…」
俺が驚くと、武我は俺の方を見て唇を歪めた。
「違うんか?俺、まんまと嵌ったんかと思ったけど?」
そうか。
武我はそんな風に思ってたのか。
なんか、すげえ切ないわ。
俺は答えず、黙ってコーヒーを飲んだ。
それを武我は、肯定と受け取ったかも知れないと思ったが、もう、どうでも良かった。
どんな形でも、武我が俺を抱いてくれたことに変わりはない。そして、またしたいと思ってる事も分かった。
心の中では俺を淫乱男だと軽蔑してるのかも知れないけど、それでも身体を欲しいと思うのは俺に興味があるからだ。
マジで軽蔑して嫌われたなら、相手にもしてくれないに決まってる。だから俺は、まだ望みを捨てない事にした。
「コンビニ、寄る?」
缶から口を離し、俺は何事も無かったかのように言った。
「ああ、寄るべ。あ、おまえ、今週号買ったか?」
いつも買ってる漫画雑誌の事を訊かれ、俺は頷いた。
「ああ、昨日買った。部屋にあるよ」
「じゃ、買わねえ。見して?」
「ああ…」
こんな風に話してると、以前と何も変わってないみたいだった。
けど、確実に、俺を見る武我の目は前とは違う。
「なあ、晶…。おまえ、ローション持ってねえの?」
その言葉にドキッとし俺は武我を見た。
その目の暗さに喉が鳴る。
俺は、ゴクッと喉仏を上下させてから、やっと答えた。
「持ってるよ…」
すると、武我がニヤッと笑った。
「そか。なら、使おうぜ?」
「ん…」
頷くと、武我はまた前を見て飲み掛けの缶を煽った。
「あ、電車来たぞ」
「あ…、うん」
立ち上がって空になった缶を空き缶入れに放り入れると、武我は白線の前まで歩いて行った。



その日、家に行ってから俺はまた武我に抱かれた。
トイレと違って広いベッドの上だったから、武我は俺の脚を開いて前から挿れてきた。
アナルをローションで濡らして滑りも良かったし、1度ヤッてた所為もあって、挿入はスムーズだった。
その所為か痛みも殆ど無く、俺は1回目よりも感じまくって、エロ声を上げ続けた。
武我の興奮した顔が見えるのも、さらに気分を煽ったし、感じてる表情を見ると俺も余計に感じた。
このまま、武我に抱かれる事が普通になるのだろうか。
けど、これが遊びじゃなくなる日は来るんだろうか。
「武我…」
終わって、俺の中からチンコを抜いた武我に俺は腕を伸ばした。
「チューしてえ。なあ、チューしよ?」
思い切って言ってみる。
すると、武我はまた俺の方へ屈んで、顔を近づけて来た。
そして、武我は躊躇いも見せずに俺の唇に唇を押し付けてきた。
俺は、嬉しくなって武我の首に腕を回した。
何度も絡め、武我の口の中に舌を差し入れるとチュッと強く吸ってくれた。
それだけで、腰にズンと響いてまた股間が熱くなるのが分かった。
「んんっ…」
喘いで、武我の首に益々しがみ付く。
武我は何度か俺の舌を吸った後、軽く噛んで、離れて行った。
放心状態で見上げた、俺の濡れた唇を親指で拭い、武我は起き上がった。
「先に、シャワー使わして?」
「ん…。あ、バスタオル、分かるよな?」
「ああ、大丈夫」
脱ぎ捨ててあった自分のパンツを掴み、武我は部屋を出て行った。
俺は武我にキスして貰えた事が嬉しくて、その余韻に浸ったままベッドの上に横たわっていた。
「美野里と別れねえとな」
突然思い出し、俺は呟いた。
武我との関係は遊びの域を出た訳じゃねえけど、でももう、美野里と寝てもきっと勃たねえ。このまま、偽って付き合ってても罪悪感が増すばっかりで、美野里も可哀想だろう。
俺を抱いても、武我はまた琴音ともヤるんだろう。
でも、俺はもう、無理だ。
武我じゃなきゃ感じねえし、勃たねえと思う。
気が重かったが、俺は美野里にちゃんと別れを切り出そうと思った。