イヌ・3
「ぅふッ…、やっ…やっ…」
夏樹は恥ずかしさに首を振った。
上気した顔は熱っぽく、耳まで真っ赤に染まっている。
Tシャツの下から滑りこませた時には、すでにもう硬く尖っていたその部分を的確に探り当てると、隆哉の指は休むことなく動き続けていた。
その指の動きに、夏樹の身体は素直に反応を繰り返した。
「あんッ…」
ギュッと両の乳首を摘まれて、夏樹はピクンと震えて仰け反った。
「やだぁ…、そこッ…」
ここを愛撫されると、夏樹はいつも恥ずかしくて泣きたくなった。
布の下でもぞもぞと動いている隆哉の手が酷く卑猥に映る。目を逸らそうとしても、すぐにまた視界に入ってしまい、夏樹は益々頬を火照らせた。
だが、だからと言って逃げ出すことは出来ないのだ。
何故なら、隆哉の愛撫が始まると、その逃れがたい快感に夏樹はすっかり捕らえられてしまうからだった。
「夏樹…」
優しく囁いた後、隆哉は後ろから夏樹の耳朶を口に含んだ。
「あ…」
夏樹の下半身は、すでに、さっき隆哉の手ですっかり裸にされていた。
その双丘の中心に猛った物がグッと押し付けられた。
塗りつけられていたクリームでぬるぬると滑る。感触で、その硬さがはっきりと分かった。
カーッと、また夏樹の顔に血が上る。
それが自分の中に入って来た時の事を、思わず考えてしまったからだった。
「リキィ…、もう弄んないでよぉ…」
乳首を弄られると、その快感がダイレクトに股間に血を集める。
また首を振って夏樹は言ったが、その声はまるで隆哉に甘えているように聞こえた。
「ここ、凄く感じるようになったね?」
隆哉の言葉に夏樹は泣きそうな顔になったが、すぐにまた快感に喘ぐと目を瞑ってしまった。
背後から胸に回された隆哉の指が、くりくりと勃起した乳首を転がしている。
「吸われるより、この方が好き?」
「ぅふっ……んッ…」
恥ずかしさに首を振ったが、確かに、こうされるともう、夏樹は抵抗することが出来なかった。
股間で勃起したものから、盛んに透明な液が零れて伝う。摘んで捻られると、甘ったるい声と共に、とろり、とまた溢れ出した。
夏休みも半ばに差し掛かり、隆哉の所属している剣道部の合宿も終わると、約束通り2人は殆ど毎日顔を合わせていた。
だからと言って、まさか毎日性行為ばかりしている訳ではない。
お互いの家でゲームをしたり、映画を見に行ったり、遊園地に行ったりした。それに、成績のいい隆哉に教わって、夏樹は夏休みの宿題も順調に片付けていた。
時折、キスをするぐらいで、殆どは普通の友達同士がするようなことをして一緒の時間を過ごしていたのだ。
ただ違うのは、その心の中だった。
友達と居るのとはまったく違う幸福感がそこにはある。
そして、隆哉が合宿を抜け出して会いに来てくれた日から、夏樹の心の中は少し変化していた。
見目も良く、頭も良く、スポーツ万能で人気もある、そんな完璧な隆哉に対して酷いコンプレックスを抱いていた夏樹だった。
幾ら隆哉に好きだと言われても、その言葉を鵜呑みにすることが出来なかった。
隆哉に比べて、自分には何もいいところが無い。 “釣り合わない”と言う、他人の言葉がいつも夏樹の心に突き刺さっていたのだ。
だが、あの日から、もう、そのことは考えまいと夏樹は思っていた。
誰がなんと言おうと、隆哉は自分を可愛いと、好きだと言ってくれる。その言葉だけを信じて、夏樹は隆哉の傍に居ようと決めたのだ。
そして、あの時以来、心だけではなく夏樹の身体も変わってしまったようだった。
隆哉に抱かれることは、勿論最初から嫌ではなかった。
だが、何処か恥ずかしさや躊躇いが先に立ち、隆哉にされるままに流されているような部分があったし、キスをねだることはあっても夏樹が自分から性行為を求めることは無かった。
だが、今は違う。
まだ恥ずかしい気持ちが強い所為で、あからさまにそれを求めることは無かったが、顔を合わせていながら隆哉が触れてくれないと、寂しくて堪らなくなってしまうのだ。
今日も、久し振りに自分の家でゆっくり会える時間が出来ると、昼間だと言うのに夏樹は隆哉に甘えてその胸にしがみついた。
“抱いて欲しい”と言葉ではまだ、とても言い出せない。だから、態度で示すしかなかったのだ。
「夏樹…」
隆哉の方でも最初からそのつもりだったのだろう。すぐに夏樹を抱きしめると、唇を寄せてきた。
キスをしながら脱がされ、ハーフパンツとトランクスが夏樹の足から抜かれた。
まだ昼間だけに明るくて、すべてを見られてしまうことに躊躇いはあったが、夏樹はすぐに隆哉の指をそこへ迎え入れた。
最初だけは、やはり異物感もあり、どうしても身体が構えてしまう。だが、クリームのついた指で十分に解されると、それだけでもう体中が熱く火照って、夏樹は恥ずかしいほど喘いでしまった。
その後でまた熱いキスをされ、隆哉の愛撫が始まったのだ。
「やぁっ…や…、リキィ…」
弄られ過ぎて、乳首がじんじんとしてきた。
嫌がって身を捩ると、後ろから回されている隆哉の腕にギュッと捕まえられてしまった。
「もう、入れていい?」
熱っぽい声で囁かれ、ゾクンと震えると夏樹は頷いた。
四つん這いのような格好で身体を支えていた腕が力を失いそうになって、がくんと前に倒れかけたのを何とか堪えた。
すると隆哉の腕がするりと解かれ、夏樹の尻の膨らみに添えられた
「や…」
キュッと開かれて、恥ずかしさと期待感で体中が燃えるようになった。
すぐに硬い先端がそこを突き、酷い圧迫感と鈍い痛みが夏樹を襲った。
「んぁッ、痛い……」
隆哉自身の大きさで、挿入と共にその部分が目一杯に押し広げられるのが嫌でも分かる。 だが、それが不快かというと決してそうではなかった。
「少し我慢して…?」
そう隆哉に言われ、夏樹はコクコクと頷いた。
「ああ……、凄く柔らかいよ、夏樹…」
擦れた隆哉の声が酷く色っぽくて、目が眩みそうになる。
苦しささえも、すぐに快感に摩り替わっていくのが分かった。
(俺…、俺…、変だよッ…)
隆哉に抱かれるまでは何も知らなかったのに、いつの間にか自分が酷く淫らになってしまった気がして、夏樹は少し怖かった。
(苦しいのに…)
だが、欲しくて堪らない。
「んふぅぅッ……」
ぐーっとそれが自分の中を通っていくのが分かる。
すると、夏樹はまた、無意識に甘ったるい声を上げてしまった。
隆哉の両手が腰を掴み、夏樹をゆっくりと揺すり始めた。
身体の下の枕を掴み、夏樹は仰け反って声を発した。
隆哉の動きが早まると、余りの快感の高まりに夏樹は殆ど泣くような声を上げ始めた。
やがて、隆哉が角度を変えて夏樹のポイントを擦り上げると、泣き声は本物に代わっていった。
「あんっ…やだぁ……、リキィ…、リキィッ……」
快感の強さに目が眩む。
もう泣くしか出来なくて、夏樹は何も考えずに声を上げ続けた。
その内に、クンッ、クンッと夏樹の腰が持ち上がり、両手がぎゅっと枕を掴んだ。
「ふぁぁぁっ……、出ちゃっ…」
声が詰まり、夏樹の身体が大きく震えた。
そして、次の瞬間、その先端から白濁した精がトロトロと流れ出した。
「んくッ…んッ…、んッ…」
ぴくん、ぴくん、と何度も身体を揺らし、夏樹は恍惚とした表情で絶頂を極めた。
一緒に浴びようと言われ、夏樹は隆哉と一緒にバスルームへ入るとシャワーを浴びた。
恥ずかしがる夏樹の身体を隅々まで洗うと、隆哉は先にバスルームを出て行った。
独りになったバスルームでシャワーの飛沫の下に立ち、夏樹はまた身体を熱くしていた。
細かく強いシャワーの飛沫が当たっただけで、また勃起してしまった乳首がじくじくとする。
隆哉によってすっかり敏感に変えられてしまった自分の身体が恥ずかしくて堪らなかった。
「俺、また後ろだけで…」
呟いて、そっと両手を後ろへ回すと、夏樹は自分の臀部を掴んだ。
隆哉の大きなもので擦られた感触がまだ残っている。思い出すと、それが蘇って足が萎えてしまいそうだった。
「エッチッ」
自分に対して罵るようにそう言い、夏樹はパンッと音を立てて自分の尻を叩いた。
バスルームから出ると、様子を見に来たらしい隆哉が、丁度表のドアを開けて中へ入って来た。
そして、すぐにバスタオルを取って、夏樹の身体を拭いてくれた。
「大丈夫?夏樹」
さっきは、半ば強引に夏樹を裸にしたり、脚を開かせたりした癖に、行為が終わると途端に夏樹をとことん甘やかす隆哉だった。
「キスマーク、つけちゃヤダって言ったろ?」
少し膨れて夏樹が言うと、隆哉はすぐに済まなそうな顔になった。
「あ、ごめん。つい…」
「恥ずかしい。こんなトコ」
乳首のすぐ脇に、幾つもの赤い痕があった。
「でもほら、服着ちゃえば見えないから。ね?」
宥めるようにそう言うと、隆哉は屈んで夏樹の唇にキスを落とした。
本当は隆哉が付けた痕だと思うと嬉しかった。だが、それを素直に言えない夏樹なのだ。
今日は夜まで居られるという隆哉にとことん甘え、夏樹は夕食の用意までしてもらった。
来週の週末は両親揃って父の田舎へ出掛けることになっていたので、夏樹は食べながら、隆哉に泊まりに来ないかと誘った。
「ホント?泊まってもいいの?」
カレーのスプーンを運ぶ手を止め、隆哉は嬉しそうに言った。
「うん。リキに予定がなければだけどな」
本当は何があっても泊まって欲しかったが、夏樹は素っ気無くそう言ってスプーンを口に運んだ。
「土曜は午前中だけ部活だけど、日曜は何にもないよ。じゃあ、泊まる用意して、部活が終わったら真っ直ぐ来るから」
「うん、いいよ」
嬉しさに胸が高鳴ったが、夏樹は必死でそれを顔に出すまいとした。
夕食の後、手伝うと言った夏樹をソファに残し、隆哉は汚れた食器を綺麗に片付けてくれた。
その間、夏樹は隆哉を気にしながらもテレビのお笑い番組を見ていた。
だが、隆哉に“もう、帰る”と言われるのが嫌で、片づけを終えて隣に腰を下ろした彼にすぐに凭れかかった。
「まだ、時間あんだろ?」
少々不機嫌に夏樹が言うと、隆哉はすぐに肩に腕を回してきて頷いた。
「うん、俺は平気だけど。小母さんたち、そろそろ帰ってくるんじゃないのか?」
「まだ、7時半だろ?8時過ぎまで残業だって言ってたから、2人とも9時過ぎなきゃ帰って来ないよ」
「そうか」
隆哉はまた頷くと、夏樹を更に抱き寄せてきた。
「なら、部屋に行かない?」
「えっ?」
その意味を知って、カーッと夏樹の顔が赤くなった。
「まさか、またする気かよっ」
信じられないと言いたげな顔で夏樹が睨むと、隆哉は気弱そうな目つきでじっと見返した。
「嫌か?」
普段は優し過ぎるほど優しくて、なんでも夏樹の言うことを聞いてくれる。クラスの皆に忠犬などとからかわれる隆哉だったが、性行為に限ってはいつも夏樹を思い通りにしてしまう。
こんな気弱そうな態度を取っていても、夏樹が“うん”と言った途端、きっとすぐに狼に変わってしまうに違いなかった。
「やじゃないけど。でも、さっきだってあんなッ……。リキッ…」
夏樹がまだはっきりと返事をする前に、隆哉は夏樹をソファから抱き上げた。
吃驚して暴れる夏樹を軽々と抱え、隆哉は階段を上って夏樹の部屋へ入った。
ベッドの上に下ろされると、夏樹は隆哉を睨んだ後でさっと目を逸らした。
本当は、夏樹も隆哉が帰る前にもう一度触れて欲しかったのだ。
だから、乱暴に服を脱がされて腹立たしげに詰っても、隆哉の手が身体を弄り始めると、夏樹はすっかり抵抗を止めてしまった。
「ああっ…んッ…」
隆哉の身体が入った途端、夏樹は彼にしがみついて大きく喘いだ。
(もっとして、もっとして。リキィッ…)
優しくて何でも言うことを聞いてくれる、甘やかしてくれる隆哉も勿論好きだったが、少々強引で乱暴とも言える、自分を翻弄してしまうこの時の隆哉も、夏樹には堪らなく魅力的だった。
「リキィ…、大好き……大好き…っ」
快感に我を忘れ、夏樹は自分が何を口走っているのか分かっていなかった。
「夏樹…」
普段は照れ臭さからか、決して好きだと言ってくれない夏樹が、素直に感情を口にするのを聞いて、隆哉は心から嬉しそうな顔をして彼を抱きしめた。
「俺も大好きだよ…、夏樹……」
そう囁くと、隆哉は夏樹の上唇の尖った部分をそっと口に含んだ。